リーダーは「意味」を伝える
『本物のリーダーとは何か』
ウォレン・ベニス、バート・ナナス著 伊藤奈美子訳 海と月社 2011年
この本に紹介されている、すぐれたリーダーの四つの戦略のうちの、
二つ目が、『あらゆる方法で「意味」を伝える』である。
その文章だけを読んだとき、
What や How だけでなく、 Why を伝える、という意味かと思いましたが、
そんな単純な話ではありませんでした。
『リーダーはビジョンを描くだけでなく、
組織の「社会構造」も設計しなくてはいけない。』
「社会構造」とは、組織構造、組織文化、仕組み、規範、価値観、
といったことを包括しているようです。
そして、『社会構造は、組織のメンバーや関係者に文脈(意味)を与え、
コミットメントを引き出す。』
ということだそうです。
リーダーがビジョンを示すことは、もちろん不可欠ですが、
そこに到達するための組織文化を同時にデザインし、
仕組みを整えなければ、達成できない、ということですね。
その組織文化や仕組みの中で、
働く人は、仕事の「意味」を見出し、
コミットメントが高まるということなのでしょう。
「日本一 ~~な会社になる!」なんてビジョンを示しても、
「日本一 ~~な」会社の社員にどんな行動が求められるか、
「日本一 ~~な」会社が提供する商品やサービスって一体どんなもので、
が見えないと実現はできない。
しかも、その「行動」に対してお手本を示し、評価する仕組みも必要、
「商品」「サービス」を開発、製造、販売するプロセスも大切、
ということですね。
「日本一 ~~な会社になる!」とビジョンや目標だけを示して、
「がんばろう!」メンバーを鼓舞するだけではダメなんです。
・・・まったくその通りですね。
さらに、その企業の提供している「サービス」「商品」が
どのように社会に貢献しているのか、
そこで働く自分は、その社会貢献にどう貢献しているのかを示す。
それが「意味」を伝えるということでしょうか。
『モチベーション3.0』『マーケティング3.0』に通じますね。
リーダーが「社会構造」を設計する、という表現が新鮮でした。
結果を出すためには、
ゴールを示して、士気を高めるだけではなく、
間違いなく成果を生み出せるような組織や仕組みを作れ、ということは、
研修に置き換えて考えると、
何をどう行うかを教えるだけではなく、
間違いなく実践する仕組み、実践したくなるしかけを同時に作らないといけない、
ということになるかと思います。
「研修はイベントではなく、プロセスである」というボブ・パイクの考えにも
通じるものですね。
研修というイベントだけに注力するのではなく、
研修の前後も包括した仕組みや仕掛けが大切、というものです。
この本の初刊『Leaders』は1985年に刊行されたそうです。
20数年経った今でも、普遍の真実には説得力があり、
20数年経っても同じ課題に直面している私たちが存在します。
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