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KSA – 何を教えるのか?

研修の企画、インストラクショナルデザインを行う際に大切なことの一つが、
何を教えるのか?という分析です。
今日は、K(Knowledge 知識)、S(スキル)、A(Attitude 態度・姿勢)という
一般的なフレームワークを使って考えます。

まず簡単にKSAとは何かを分類しておきましょう。
車の運転に例えて考えると以下のようになります。

車を運転する、ということを習得する際に、
学ぶべきKとは・・・
車の基本構造
標識、交通ルール
などが代表的なものです。
実際に車を運転してみる前に、予備知識として習得しておく必要があります。

それに対して、Sとはスキルですので、
実際に体を動かして「できる」ようになる必要があることです。
エンジンをかける
前進する
後進する
停車する
駐車する
曲がる
高速道路で走行する
などなど・・・
これはスキルですので、練習して、できるようになる必要があるものです。

Aとは、態度、姿勢、心がけ、などが入りますので、
常に安全運転を心がける
譲る気持ちを持つ
危険を予測しながら運転する
などでしょうか。
知識もスキルもあっても、これが欠けていると大変なことになる危険性があります。

ということを前提にして、研修で何をどのように教えるかをデザインしていくわけです。

KSAのフレームワークが便利なのは、
こうして客観的に書きだして、研修をデザインしていく、という使い方もあれば、
何かの現象を見た時に、不足しているのはKSAのどれなのか?を判断し、
不足していることをトレーニングする、もしくはコーチングする、という判断が必要、
という場面も多いかと思います。

前者の場合は、KSAの区別はさほど難しくないと思うのですが、
後者の場合、KSAが混同してしまっているケースをよく見かけます。

そろそろ新入社員研修を企画している方も多いかと思いますので、
新入社員を例に考えてみましょう。

例えば、配属先から「今年の新人は挨拶ができない」という声が聞こえてきました。
よくある話ですよね。

これはKSAの何が不足している可能性がありますか?

おそらく最も一般的なのは、
「社会人としての心構えがまだできてない」
などという、Aが不足しているという反応ではないでしょうか。

でも本当にそうでしょうか。
もしかすると、
「顔見知りの人には当然挨拶をするけれども、そうでない人にはいきなり挨拶をしても失礼かもしれない」
という認識かもしれません。
つまり、「この会社では、知ってても知らなくても、すれ違う人には全員挨拶をする」
というルール?を知らないのかもしれないのです。
その場合、不足しているのはAではなく、Kです。

「それくらい常識でしょう!」という意見もあるとは思いますが、
「知らない人に話しかけられても、返事したりしてはいけません」
と子どもの時から教育されていたとしたら、
社会人となった今はルールが変わる、ということを
知識として学び直す必要があるということだとも言えませんか。

このように考えると、KやSが不足しているのに、
「モチベーションが足りない」
「自覚がない」
と、Aの問題にすり替えられてしまっていることがとても多いように感じます。

逆もあります。

KやSは備わっていて、Aが不足している場合。
言い換えると、やればできるのに、軽視している、やる気が低下している、
という状況にある場合です。
例えば、
書類の提出期限を守れない新人Aさん。
期限までに提出しないといけないことはわかっていますし、
書類作成のスキルがないわけでもありません。
翌日の朝一番に出せばいいか・・と少し甘い認識です。

この場合、
「仕事の段取りができてないから、時間管理の研修に参加してもらおう」
ということではありませんよね。
「甘い認識」ではダメだということを、上司からコーチングする必要があるでしょう。

というように、
本当はKまたはSが不足しているのに、Aだと判断したり、
Aに改善の余地があるのに、KやSを教えたり・・・
ということが起きていないか、今一度分析なさってみてください。

 

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