安心して学べる環境
一昔前のような、
体力的にも精神的にも過酷な研修というのはかなり姿を消したように思いますが、
それでも、何かを学ぶとき、「まじめに」「厳しく」「忍耐」などのイメージが
いまだに強く残っていることも珍しくないのではないでしょうか。
その印象は変わってきているという方でも、
研修中の楽しい要素や、ディスカッションなどアクティビティというは、
不要、あるいは時間の無駄だと思う人がいるという話は、今でもよく耳にします。
一方で、過度なストレスや緊張は効果的な学習を阻害するという
脳科学的な知見や、笑いが健康に与える好影響なども
広く知られてきているのも事実です。
楽しい、と言っても、ふざけていたりするわけではありません。
また「笑いを取る」ことが目的でもありません。
知的好奇心が刺激されるような状況も「楽しい」と思います。
つまり、脳に過度なストレスがなく、「安心して学べる環境」であることがポイントです。
「安心して学べる環境」には、以下の要素が必要だと考えます。
○ 否定されない
○ 受け入れてもらえる
○ 失敗しても許される
○ 恥をかいたり自尊心が傷つくような場面がない
○ この場(研修)での言動が後(仕事に対する評価など)に影響しない
○ 学ぶことの目的や意義が理解できている
○ 自分の存在価値が感じられる
○ 物理的にも快適である
ですが、日本では「勉強する」という言葉に対しての形容詞として、
「楽しく」より「まじめに」や「厳しい」という言葉の方がしっくりくるという方が
まだまだ多いのが現実な気がします。
そのことを実感したエピソードを2つご紹介します。
「厳しく指導してください」
あるクライアントで新入社員研修を担当したときのことです。
研修の中で行ったグループワークで、いくつかのグループが、
時間内に終了することができませんでした。
多少の時間を延長することは全く問題なかったので、
3分ほど延長しました。ただ、新入社員研修でしたので、
仕事の進め方という観点から、もしこれが研修のワークではなく業務だったら、
提出期限になってからできていません、という報告をするのではなく、
期限の前に、遅れそうであることを報告し、どうすべきか相談しましょう、
という旨のコメントをしました。
すると、その延長した3分の間に、
後方でオブザーブしていたご担当の方に、廊下に呼ばれました。
何かと思ったら、今の私のコメントは、内容は適切だけれども
言い方が優しすぎたので、もっと怖い表情で厳しく伝えてください、とのことでした。
研修中、しかも3分延長しているその短時間にそのようなことを言われたため、
私の意図や方針などを説明したりする時間はありませんでした。
当時も私の方針としては「雷を落とす」ような対応は
効果的ではないと思っていましたので、
その担当者の方のリクエストには応じませんでした。
水も飲んではいけない?!
また別のクライアントでの若手向け研修の開始時のことです。
担当の方が、参加者にいくつかの連絡事項を話していました。そのときに、
「ペットボトルのお茶などを持参している人は、
机の上に置かずにバッグにしまいましょう。
先生に失礼ですので、飲み物は休憩時にお願いします。」
とおっしゃったのです。
本当に、大きな衝撃でした。「先生に失礼」というのは、
参加者が研修中に水やお茶を飲むことが、私に対して失礼であるということなのです。
そんなこと、私はみじんも思っていませんし、
そんなことを私がリクエストしていると思われたくもありません。
むしろ、水分や栄養は脳に必要なものですので、
補給しながら研修を進めたいと思っています。
・・・とその場で言えるはずもなく、
困惑しながら研修をスタートさせた記憶があります。
皆さんが行っている研修は、脳にとって優しい学習環境になっているでしょうか。
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