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ボブ・パイク氏オンラインセミナーを終えて

2021年9月18日にユームテクノロジージャパン様(以下UMU)主催で、ボブ・パイク氏のオンラインセミナーを開催しました。

ATDのレジェンダリースピーカー 『ボブ・パイク』氏から直接学ぶ!
「結果につなげるための「参加者を主体的にさせる手法」とは」
https://umujapan.co.jp/event/online-training-bob-pike/

400名を超えるお申し込みをいただき、実際に約350名の方にご参加いただきました。

私にとって、とても貴重な、思い出に残るセミナーになったので、ここに記しておきたいと思います。

「8月終わりのATDカンファレンスのフォローアップ的な位置づけで、日本人向けに何かやりましょう」とUMUさんからお声がけいただいたところから、企画はスタートしました。今年ボブは講師歴が52年、ATDでの登壇が連続44年目になり、「Lifetime Achievement Award」という賞を受賞しました。これは、生涯にわたっての、人材開発、特に講師養成の分野におけるボブの貢献に対して贈られた賞です。

その後、せっかくならATDカンファレンス参加者に限定せず、広くオープンに、そして今年は通訳が入らなくなったATDカンファレンスのボブのセッションを、日本語通訳付き(私・・!)で再現しちゃおう、という話に発展しました。しかも参加費無料。あっという間にお申し込みが300を超え・・・最終的には400を超えたと聞いています。

ATDのボブのセッションは8月31日早朝にライブで参加して、内容を把握。その後、ボブと打ち合わせをして、日本向けのセミナーをどう進めるかを話し合いました。ATDのセッションは60分ですが、逐次通訳なので時間がかかることに加え、余裕を持たせてもっとインタラクティブなセミナーにしたい、と考え、2時間に設定。

300名、400名という人数なので、ZOOMのウェビナーモードで開催するため、「コメントを付ける」機能は使えません。でも、UMUがあります!UMUの機能を使い、インタラクティブにする計画を立てました。

私はプロの通訳ではないので、一語一句正確に訳すことは到底できません。ですが、ボブの手法を日本で皆様にお伝えしてきた15年間があるので、私なりの解説を加えることで、大切なメッセージがよりわかりやすくなるように努めよう!と思ってはいたのですが・・・

ボブはストーリーテリング(エピソードなどを話すこと)に、とてもとても長けています。いつもいろいろな話を交えながら、聴衆がイメージしやすいように自分の伝えたいポイントを伝えてくれます。そしてそのネタが豊富!今回も、ATDのセッションで話していたストーリーとは全然違うストーリーがいくつか出てきました。つたない通訳としては、本番で初めて聞く話は、先の展開が見えなくてとっても難しかったです・・。ヘレンケラーのエピソードは、本当にきちんと訳せなくて、申し訳ありませんでした・・・。最後まで聞いて、「あー、サリバン先生の話かぁ・・」とやっと理解したのでした・・・。ですが、途中、ボブの回線が落ちてしまったときには、ボブが戻ってくるまでの間、ボブが伝えたかった内容を予測して話をつなぐことはできた、かな・・と思います。

打ち合わせの段階で、「さすがボブ!」と思った出来事がありました。ある場面で、私は「Yes / No」で回答していただくアンケートを用意していました。「Noと思う方が多いかもしれないけど、実はYesなんですよ、なぜなら・・」という話の展開を考えていました。そこでボブが一言。「参加者の発言を否定する流れは避けよう」と。多くの人がNoと答えたら、それを否定して「実はYesなんだ」という展開ではなく、「これがYesと言えるとしたら、どんな理由が考えられますか?」というオープンクエスチョンにしよう、と言われたのです。ハッとしました。無意識のうちに400名の方にオープンクエスチョンに回答していただくことを避けていたかもしれまん。確かに否定しない方がいい、そして、UMUを使えばAIが自動解析してくれるので、400人のチャットを読むなんてことにはならないのです。

AIが回答を自動解析した結果は、例えばこんな風に表示されます。入力された回数の多い言葉を自動的にピックアップし、大きさで数を表現してくれます。

当日は皆さまとの「対話」を楽しみながら、セミナーは進みました。大変な状況ではあるけれど、講師としての提供価値を高めるために何ができるのか?といテーマです。表面的なスキルやテクニック的な話にとどまらず、52年の経験からボブが語ってくれる深いメッセージが皆様に伝わっていることを願っています。

さて、ボブですが、写真でご覧いただけるかと思いますが、病院のベッドの上です。前日の最終打ち合わせの際には、「明日は起き上がって、きちんとしたビジネスシャツで来るから!」と言っていたのですが、当日ログインしたときには、後ろに枕が!

ボブはその前の週に、お尻あたりの骨の外科的処置のための手術を受けていました。経過は良好なのですが、2時間座ったままで体重がかかり続けると、傷が痛む可能性があり、痛みが生じると集中が途切れるリスクがあると判断したそうです。

実はボブ、昨年12月に腎臓がんであると診断されました。転移も確認され、ステージ4という厳しい内容でした。余命宣告もされました。ですが、その後の免疫治療の経過が良好で、がん細胞は減ってきていて、今では当初の「宣告」より長く生きられる予想に変わっています。

昨年その事実を知ったとき、翌日にでもボブに会いに行きたい、と強く強く思いました。ですが、今は海外に行ける状況ではありません。もう本当に悔しくて、でもどうすることもできない虚しさが続いていました・・・。そんな中、このセミナーの企画をいただいたのでした。

ボブは、敬虔なクリスチャンです。自分が生涯を終える、目を閉じるその最後の瞬間まで、おそらく、自分に与えられたミッションを果たそうとすると思います。「世界中のトレーナー・講師の皆さんのために、役に立ちたい。」という想いは、がんの告知でもまったく揺らぐことはありませんでした。以前から、「リタイアする、というのは考えていない。今の仕事こそが自分の生きる意義であり、リタイアしてからやりたい事なんて、ない」とずっと言っていた人です。

セミナーでは、「たった一人の人」が持つパワーの大きさを語ってくれたボブですが、そんなボブこそが大きな影響力を世界中におよぼしている「たった一人の人」です!

ボブは30年くらい前に沖縄に来たのが初来日だそうです。2016年に私がボブと仕事をするようになってから、数回来日していますが、日本が大好きだと言ってくれています。奥様はまだ日本に来たことがなく、今度は奥様も一緒に二人で日本に来たい、という夢はあきらめていません。

今回、このような形で日本の皆様とご一緒できたことは、ボブにとっても大きなエネルギーになったことは間違いありません。突然の研修のオンライン化はいろいろ大変でしたが、でも、オンラインだからこそこんなこともできた、大きな大きな恩恵だと思います。そして何より、主催してくださったユームテクノロジージャパン様、メンバーの皆さま、本当に本当にありがとうございました。

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